在留資格「経営・管理」から在留資格「永住者」
「経営管理」の在留資格を持つ外国人が永住者の許可を得るためには、大きく4つの条件をクリアする必要があります。永住権の4つの条件①素行が善良であること②独立して生計を立てることができる資産や技能があること③日本の国益に合うと認められること④身元保証人がいること。
1、素行が善良であること(素行善良)
日本の法令に違反して、懲役・禁固または罰金に処せられたことがないこと
日常生活、社会生活において違法行為や風紀を乱す行為を繰り返し行っていないこと
2、独立して生計を立てられる資産や技能があること(独立生計要件)
- 収入
- 扶養人数
収入
独立して生計を立てていけるか判断する上で、収入は重要な指標です。
一般的に就労系ビザで在留している場合、過去5年間にわたって年収が300万円以上あるというのが一つのハードルとされています。経営者の場合、役員報酬で年間最低300万円は確保したいところです。
年収を証明する提出書類
永住許可の申請では、住民税の課税証明書を提出して年収を証明します。住民税の課税証明書とは、住民税の税額を証明するもので、前年1年間の所得額が記載されている書類です。
※課税証明書は数年分提出する必要がありますが、現在所有の在留資格によって必要年数分が異なります。
在留資格「経営・管理」の場合は、
〇事業の継続性について
事業活動においては様々な要因で赤字決算となり得るところ、当該事業の継続性については、単年度の決算状況を重視するのではなく、貸借状況等も含めて総合的に判断することが必要であることから、直近二期の決算状況に
より次のとおり取り扱うこととします。
(1)直近期又は直近期前期において売上総利益がある場合
a 直近期末において欠損金がない場合
直近期において当期純利益があり同期末において剰余金がある場合には、事業の継続性に問題はありません。直近期末において剰余金がある場合又は剰余金も欠損金もない場合には、事業の継続性があると認めることとします。
b 直近期末において欠損金がある場合
(ア)直近期末において債務超過となっていない場合
事業計画、資金調達等の状況により、将来にわたって事業の継続が見込まれる可能性を考慮し、今後1年間の事業計画書及び予想収益を示した資料の提出を求めることとし、原則として事業の継続性があると認めます。
(イ)直近期末において債務超過であるが、直近期前期末では債務超過となっ
ていない場合
債務超過となった場合、一般的には企業としての信用力が低下し、事業
の存続が危ぶまれる状況となっていることから、事業の継続性を認め難い
ものですが、債務超過が1年以上継続していない場合に限り、1年以内に
具体的な改善(債務超過の状態でなくなることをいう。)の見通しがあるこ
とを前提として事業の継続性を認めることとします。
(ウ)直近期末及び直近期前期末ともに債務超過である場合
債務超過となって1年以上経過しても債務超過の状態でなくならなかっ
たときは、事業の存続について厳しい財務状況が続いていること及び1年
間での十分な改善がなされていないことから、原則として事業の継続性が
あるとは認められません。
ただし、新興企業(設立5年以内の国内非上場企業をいう。以下同じ。)
が独自性のある技術やサービス、新しいビジネスモデル等に基づき事業を
成長させようとする場合、設立当初は赤字が続くことも想定されます。そ
のため、新興企業については、以下の書類の提出を申請人に求めることと
し、これら提出書類の内容を踏まえた結果、債務超過となっていることに
ついて合理的な理由があると判断される場合には、事業の継続性について
柔軟に判断することとします。
○ 中小企業診断士や公認会計士等の企業評価を行う能力を有すると認
められる公的資格を有する第三者が、改善の見通し(1年以内に債務
超過の状態でなくなることの見通しを含む。)について評価を行った書
面(評価の根拠となる理由が記載されているものに限る。)
○ 投資家やベンチャーキャピタル、銀行等からの投融資、公的支援に
よる補助金や助成金等による資金調達に取り組んでいることを示す書
類
○ 製品・サービスの開発や顧客基盤の拡大等に取り組んでいることを
示す書類
(2)直近期及び直近期前期において共に売上総利益がない場合
企業の主たる業務において売上高が売上原価を下回るということは、通常の企業
活動を行っているものとは認められず、仮に営業外損益、特別損益により利益を確
保したとしても、それが本来の業務から生じているものではありません。単期に特
別な事情から売上総利益がない場合があることも想定されるところ、二期連続して
売上総利益がないということは当該企業が主たる業務を継続的に行える能力を有し
ているとは認められません。したがって、この場合には原則として事業の継続性が
あるとは認められません。
ただし、新興企業が独自性のある技術やサービス、新しいビジネスモデル等に基
づき事業を成長させようとする場合、設立当初は赤字が続くことも想定されます。
そのため、新興企業については、以下の書類の提出を申請人に求めることとする。
○ 中小企業診断士や公認会計士等の企業評価を行う能力を有すると認められる
公的資格を有する第三者が、改善の見通し(1年以内に売上総利益がない状態
でなくなることの見通しを含む。)について評価を行った書面(評価の根拠とな
る理由が記載されているものに限る。)
○ 投資家やベンチャーキャピタル、銀行等からの投融資、公的支援による補助
金や助成金等による資金調達に取り組んでいることを示す書類(十分な手元流
動性があるなど当面の資金調達の必要性がない場合は当該状況を示す書類)
○ 製品・サービスの開発や顧客基盤の拡大等に取り組んでいることを示す書類
※上記において主な用語の説明については以下のとおり
直近期:直近の決算が確定している期
直近期前期:直近期の一期前の期
売上総利益(損失):純売上高から売上原価を控除した金額
剰余金:法定準備金を含むすべての資本剰余金及び利益剰余金
欠損金:期末未処理損失、繰越損失
債務超過:負債(債務)が資産(財産)を上回った状態(貸借対照表上の「負債の
部」の合計が同表の「資産の部」の合計を上回った状態のこと)
在留資格「経営・管理」で在留する外国人は、事業の運営を適正に行うことが求められています。
扶養人数
扶養人数によって永住許可の必要年収のハードルは上がります。
1人増えるごとに、必要年収300万円+約70万円必要です。
3、日本の国益に合うと認められること(国益適合要件)
国益適合要件とは、永住申請をする外国人が日本の利益に合うと認められる必要があるということです。
国益適合の有無は、以下の5つの条件を満たすかどうかで判断します。
- 必要年数以上継続して日本に在留していること
- 納税などの公的義務を果たしていること
- 現在持っている在留資格について最長の在留期間があること
- 公衆衛生上の観点から有害となる恐れがないこと
- 著しく公益を害する行為をする恐れがないと認められること
必要年数以上継続して日本に在留していること
経営管理ビザ所有者の場合、引続き10年以上日本に在留し、このうち就労資格をもって5年以上経過していることが必要です。
納税などの公的義務を果たしていること
住民税や国民健康保険税、国民年金等をしっかり期限通りに支払っているかどうかが重要です。
経営者の場合、個人の税金に加えて会社としての納税義務もあります。
例えば、
- 法人税
- 消費税
- 事業税
- 法人住民税
などが挙げられます。
個人のそれと比べても税目は多いため、経営者は特に気を付けなければなりません。特に期限通りに支払いができているかが重視され、1日でも遅れてしまった場合は不許可の恐れがあります。
外国人が永住権を取得するために知るべき年金のはなし2年間の支払い実績のうち、1日でも支払いが遅れた月があれば永住申請は不許可になる恐れがあります。
現在持っている在留資格について最長の在留資格があること
法律上、最長の在留期間は「5年」です。しかし2022年現在、「3年」の在留期間があれば永住権申請はすることができる。公衆衛生上の観点から有害となる恐れがないこと
4、身元保証人がいること
身元保証人を必ず用意する必要があります。
申請者は、以下の条件に該当する人を身元保証人として選ばなければなりません。
【身元保証人になれる人】
・日本人・日本の永住権を持っている外国人
【身元保証人に求められること】
・職についていること・年収300万円以上(が好ましい)・住民税等の税金を納めていること
以上です。もし、不許可になった場合の対策は次回記載します。